2010年3月1日月曜日

i-SIM News:032/バンクーバー特集<5>

仙台大学スポーツ情報マスメディア研究所(ISIM)の阿部です。3週間にわたって国立スポーツ科学センター(JISS)で行われた「東京Jプロジェクト」は昨日(現地時間で27日)、バンクーバー冬季オリンピックの総括分析レポートをまとめ、現地の日本代表選手団にメールで送って活動を終えました。5回にわたってお届けしてきたバンクーバー特集、本号で締めくくりたいと思います。
◇世界の情勢は大きく変化
カナダは最後のアイスホッケーも制し、史上最多の金メダル(14個)を獲得して世界第1位。有終の美を飾りました。韓国はスピードスケートで躍進し世界第5位に。そして前回大会で4位だったロシアは、トップ10から姿を消しました。世界の情勢の変化が顕著に現れた大会でした。
◇大会総括、そして今後へ
本日未明に行われた日本代表選手団の総括記者会見で、橋本聖子団長は「一つでも金を取りたいと思っていたので悔いが残る」と総括する一方で、メダル数や入賞数はトリノ大会から大幅に増え、また若い選手の躍進もあったことを述べ、先の明るい戦いであったことを伝えました。また橋本団長は「世界ではメダル獲得が分散する傾向にあり、めりはりの利いた強化で全体的な底上げが必要」であることを指摘しました。
◇スポーツとコミュニティ
カナダを成功に導いた「Own the Podium 2010(表彰台独占計画)」のCEO(経営最高責任者)のロジャー・ジャクソン氏は大会終盤の26日、同氏の公式ブログ(2/26付)の中で、「スポーツへの投資は共同体(Community)への投資であり、さまざまな共同体との協力関係(Partnership)により前に進むことができた。その多くの関わり合いがトップアスリートを支えた」という趣旨のコメントをしました。
オリンピックと言えば「メダル」が一つの象徴ですが、メダル獲得を一つ増やすことは、社会に対して何をもたらすのか、あるいはメダル獲得を一つ増やすことに、社会はどのように関わっているのかということを考える上で、ジャクソン氏の言葉の意味はとても深く、また印象的でした。このことは、特にトップスポーツにたずさわる上で大変重要なテーマなので、皆さんと議論したいと考えています。
<編集後記>
「氷山の一角」という言葉があります。スポーツ情報戦略活動はこの「氷山」に例えることができます。膨大な時間の情報収集活動と、たくさんの人の知恵を結集した分析活動が、水面に顔をだす「適切な意思決定」や「信頼性と説得力のある発言」を支えます。今回、この活動に参加した学生は、そのことを強く実感したのではないかと思います。
バンクーバー大会における東京と仙台での活動の機会を通じて、私たちが改めて学んだ数多くのことを、何らかの形で皆さんと共有したいと考えています。併せて、皆さんがこの大会を通じてお感じになったことをぜひお聞かせください。オリンピックをきっかけにスポーツを考えることは、オリンピックの大切な「レガシー」です。isim2008@scn.ac.jp まで。(阿部)