2009年9月28日月曜日

i-SIM News:010/東京2016招致とレガシー

仙台大学の阿部です。寒さを感じるようになりました。私はこの4月に仙台に越してきたので、これから初めて東北での冬を経験します。少し楽しみです。

さて、いよいよあと4日。10月2日には、2016年の夏のオリンピックおよびパラリンピック競技大会の開催都市が決定します。東京での開催が決定すれば、東京だけではなく全国にさまざまな変化が訪れます。そして体育・スポーツに関わる多くの人が、大会の開催を支える大きな役割を果たすことになります。今日は、仙台大学との関係も含めて、オリンピック招致について少し雑談をしたいと思います。

★オリンピック・パラリンピック招致(しょうち)とは
オリンピックやパラリンピックは、国ではなく一つの都市が立候補して招致活動を行います。今回は、世界で4つの都市が2016年の開催に立候補しています。シカゴ(アメリカ)、マドリード(スペイン)、リオデジャネイロ(ブラジル)、そして東京(日本)です。オリンピックやパラリンピックの開催はその国にとっても大きなイベントですので、各国とも国が都市を支援して招致活動を進めています。オリンピックとパラリンピックは、必ず一緒に行うことが、開催の前提として決められています。

★仙台大学とオリンピック招致
仙台大学には、選手として、あるいは指導者やスタッフとして、オリンピックやパラリンピックに関わる人が多くいます。また今回の招致活動には、スポーツ情報マスメディア研究所所長の勝田隆所長は、2016年東京オリンピック・パラリンピック招致委員会の計画策定専門委員として活動をしてきました。また岩瀬裕子研究員は、世界に対して日本をアピールするビデオ映像に出演し、英語でのプレゼンテーションを行っています。また私・阿部は、国立スポーツ科学センター(JISS)に勤めていた時に、東京2016招致支援フォーラムを企画・開催し、これまでにオリンピックを経験したオーストラリアやこれから開催するイギリスから先生を招聘して、日本のオリンピック・パラリンピックのレガシーを全国の大学生の皆さんとともに考えました。

★レガシーはハードからソフトへ
オリンピックを開催すると、その都市や国には多くのレガシーが生まれます。この「レガシー」とは一体なんでしょうか。「レガシー」とは一般的に、「遺産」や「引き継がれるもの」と訳されます。以前までのオリンピックでは、開催をすることで多くのスタジアムが建設されたため、「ハード」(施設・設備など)のレガシーに注目が集まっていました。これからのオリンピックで注目されるレガシーは「ソフト」としてのレガシーです。ソフトというのは、人や制度、プログラム/コンテンツ、環境などをさします。

オリンピックの自国での開催はもちろん、間近に世界のトップアスリートの戦いを見られるという大きなメリットがあります。しかしもっと大事なことは、私たちの国でオリンピックを開催することで、その後の私たちのスポーツや生活はどのように変わるのか、世界にどんな新しいメッセージを発信できるのか、そして、未来にどのような価値を引き継ぐことができるのか、ということにあります。

★招致のレガシー
実はこれまで、オリンピックを開催した後の「レガシー」のことは語られてきました。今回のオリンピック・パラリンピック招致において、日本が重視してきたのは「招致」を通じたレガシーのことです。招致のレガシーとは何か。また、なぜ招致のレガシーなのでしょうか。

オリンピックを招致するためには、その過程において、さまざまな人が準備をしたり、体制を整えたりします。また、本当にオリンピックを東京で(日本で)開催することが、私たちにとって幸せなことなのか、世界に貢献することにつながるのか、そもそもオリンピックというのは何のために開催するのか、といった賛否両論のある議論が繰り返されます。

社会的な経済活動の観点から見ても、その成否に関わらず、招致活動過程から得られるレガシー(未来のために残すことができるもの)は重要なものですが、私たちが最も身近に関わる「スポーツ」の世界においても、この過程はとても重要な時間です。私たちは東京2016招致を大きなきっかけとして、普段はあいまいにしがちであるスポーツの価値をもう一度見直したり、競争という側面だけに注目しがちなオリンピックの意義を新たな視点から再考したり、子どもたちのスポーツ環境を改善することができました。

具体的には、日本では招致過程を通じて、新たなスポーツ基本法の制定に向けた議論が一気に進みました。また東京都では、オリンピックを通じた人間教育がテキストにもなりました。全国の各地域では、子どもが自分に合ったスポーツに出会い世界を目指してチャレンジを始めるタレント発掘プログラムが動き出しました。

★未来のスポーツの姿
10月2日、4都市の代表団は、2016年の開催都市を決定する国際オリンピック委員会(IOC)総会でプレゼンテーションを行い、IOC委員の投票によって一つの開催都市が決定されます。7年後のオリンピック・パラリンピックに対する各国の提案は、未来のスポーツの姿を表しているものです。私たちの未来に、世界はどのようなスポーツを描いているのか、ぜひ注目してください。

<編集後記>
先々週のi-SIM News Vol.8で登場した岩瀬裕子研究員ですが、東京招致の代表団の一員として、IOC総会が開催されるデンマークのコペンハーゲンへと出発しました。皆さん、ぜひ日本から、東京2016招致の成功に声援を送ってください!東京でのオリンピック・パラリンピック招致・開催への期待、声援、疑問など、isim2008@scn.ac.jp までお気軽にお送りいただければと思います。(阿部)

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