2012年2月15日水曜日

i-SIM News 098/「リスペクト!おかげさまプロジェクト」から思いを馳せて

皆さんは、スポーツ関連の仕事というと、どんな仕事・職種を思い描くであろうか。本学スポーツ情報マスメディア学科の学生にこの質問をすると、プロスポーツの広報やフロント、スポーツジムのインストラクターや体育教師といった答えが、その大半を占める。この質問の真意とは?(ISIM 岩瀬裕子 研究員)

 果たして、スポーツに関連する仕事というのは上記の業種に限られたものなのであろうか。この問いの鍵は、2009年6月から始まった「リスペクト! おかげさまプロジェクト」が握っている。これは、仙台大学・ベガルタ仙台・宮城県サッカー協会・ベガルタ仙台ホームタウン協議会の4者で推進しているもので、その趣旨は次のようにうたわれている。

 「私たちのスポーツは、普段あまり気にも留めていないところで多くの仲間に支えられている。私たちが自由にスポーツを楽しめることに感謝して、その環境を支えてくれている人やモノに『おかげさま』の心を膨らませていこう」。そして、この「おかげさま」の理念をサッカーのみならず、スポーツを通して社会全体に広げていくことを目標にしている。

 そこで冒頭の質問に戻るが、答えに窮した学生から「え? 他にあるんですか」と聞かれた時に私が返すのが、例えば「八百屋」である。勘の良い方ならそのつながりが見えてくるかと思われるが、学生と話をしていると、例えそれがスポーツを専門として勉強している学生であっても、非常に限られた“ものの見方”で自分の職業選択まで狭めてしまっている。スポーツの合宿所に野菜を卸す八百屋。日々のスポーツ活動に必要な、私たちの身体を作る貴重な食物を扱う人々。

 「リスペクト! おかげさまプロジェクト」ではスポーツを支える人やものに思いを馳せながら、そこに感謝の気持ちを表し、見えづらいそのつながりの大切さを発信するとともに、ボランティアで活動に関わってくれている学生に“職業としてのスポーツ”の見方も深めることを伝えている。何も、スポーツを支える人は、ボランティアで大会運営を援助してくれる人々だけではない。家族はもちろん、日々の公共交通機関で私たちの移動を支えてくれているバスの運転手さんや鉄道の改札員さんもあってこその、私たちのスポーツ活動である。そう見ていくと、社会のあらゆる人々がスポーツに関わっていると言っていい。

 まちに「スポーツ好き」があふれた時、そこにはスポーツを通して人の輪ができる。「スポーツ好き」とは、別にスポーツ愛好家だけを指すものではない。スポーツに関わるあなたこそが「スポーツを支える人」なのだから、そんなあなたのファンで心からあなたを応援してくれている人々も含むのである。だから、私たちスポーツに関わる者は、人間的に魅力的な人でなければならない。私たち、ひとりひとりがスポーツを、スポーツの価値を大きくも小さくもできるのである。「スポーツファンの八百屋」。そう看板があがる日も遠くないであろう。