2012年3月7日水曜日

i-SIM News 099/東日本大震災から1年 -スポーツの力をどう生かすか-

平和な営みを一瞬にして打ち砕いた大震災から間もなく1年が経ちます。犠牲者への断ち難い思い、先行き不透明な放射能の恐れ、進まぬ生活再建など大震災の残した爪痕は消えません。厳しい現状の中、今後どうすれば「スポーツの持つ力」で被災者の方々を元気付けることが出来るのかー。スポーツ界に、大きな課題が横たわっています。(ISIM 荒木廸 事務課長)

日本中が大震災で打ちのめされていた2011年7月17日、サッカー女子W杯ドイツ大会で「なでしこジャパン」が初めて世界の頂点に立ちました。決勝の対戦相手は、日本が過去24回戦って1回も勝てていない米国です。先行されては追いつく粘りの末にPK戦までもつれ込み、米国が力尽きました。スポーツの持つ力が、失意の日本人を奮い立たせてくれました。
時代は一気に遡りますが、第2次世界大戦で日本が降伏した3、4年後のことです。「フジヤマのトビウオ」と言われたスイマー古橋広之進が、400m自由型や1,500m同で次々と世界記録を塗り替えました。芋で腹を満たし、藻の浮くプールでひたすら練習に明け暮れた毎日。敗戦国とあってオリンピックなどの国際大会には参加を許されなかった中での快挙でした。米空軍の空襲による“焼野が原”で、生きることに精一杯だった敗戦国民は、「フジヤマのトビウオ」の力泳で誇りを取り戻し、復興に大きな弾みがつきました。
この1年、多くのアスリートがさまざまな活動を通して被災地に元気と勇気を運んでくれました。有意義なことでした。これからは被災者や子どもたちに、自らスポーツを楽しんでもらう“場”を作ることが欠かせません。スポーツに関わる人間・組織が知恵を絞る時です。既にあちこちで実践されているのでしょうが、被災者に寄り添い、声を聞き、ニーズを分析し、継続的に活動できる足腰の強い組織の構築が大切でしょう。長い取り組みとなりそうです。